不動産投資用語を以下にご紹介します。これらは収益還元法で不動産投資を評価する際に必要不可欠である一方、中には手計算や電卓計算が困難な投資指標も少なくありません。
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GPI (Gross Potential Income:総潜在収入)
その物件に、空室・滞納による損失が全く無いと仮定したときの年間の賃料収入総額(満室時賃料)です。すなわち、その物件が1年間で稼ぐことができる収入の限界値を表します。
EGI (Effective Gross Income:実効総収入)
計算式:EGI=GPI-空室・貸倒損失+その他収入
GPI(総潜在賃料収入)から空室損と貸倒賃料(滞納)を引き、自動販売機収入や看板収入などの雑収入を加えたものです。
OPEx (Operating Expenses:運営費用)
物件の運営管理にかかる費用や、固定資産税・都市計画税、損害保険料などの、いわゆるランニングコストの合計です。ローン利息と減価償却費が含まれないことにご注意下さい。
NOI (Net Operating Income:純営業収益)
計算式:NOI=EGI-OPEx
EGI(実効賃料収入)からOPEx(運営費)を引いたものです。物件の実際の収益力を表しているといえる指標です。
NOIは、日本語で「純収益」「営業純収入」「ネット収入」などと訳されることもあります。
Cap Rate (Capitalization Rate:キャップレート、総合還元利回り)
計算式:Cap Rate=NOI/物件価格
投資家の期待する不動産還元利回りのことを言います。
実際には、無リスクである長期国債の利回り(約2%)に不動産のリスクプレミアム(2~3%)と物件固有のリスクプレミアム(地域・築年数・構造など)を合算して導き出されるケースが多いようです。具体的には、東京都心部の一定グレード以上のビル(=日本で最もリスクが少ないと考えられる不動産)のキャップレートを5%と見て、その他の物件には更に個別リスクプレミアムを上乗せするという考え方が多いようです。
ADS (Annual Debt Service:年間元利返済額)
計算式:ADS=年間元金返済額+年間利息返済額
年間の元利返済総額です。元利金等返済の固定金利ローンの場合、ADSは毎年一定額となります。
BTCFo (Before-Tax Cash Flow from operation:税引前キャッシュフロー)
計算式:BTCFo=NOI-ADS
課税所得に対する税金を支払う前に残るキャッシュフローです。
ATCFo (After-Tax Cash Flow from operation:運営からの税引後キャッシュフロー)
計算式:ATCFo=BTCFo-納税額
課税所得に対する税金を支払った後に残るキャッシュフローです。
このときの納税額は、所得税・住民税の合計を指しており、固定資産税・都市計画税は既にOPEx(運営費)に含まれていることにご注意下さい。
BTCFs (Before-Tax Cash Flow from sales:売却からの税引前キャッシュフロー)
計算式:BTCFs=物件売却価格-(譲渡費用+売却時のローン残高)
物件売却にあたり、課税所得に対する税金(譲渡所得税)を支払う前に残るキャッシュフローです。
ATCFs (After-Tax Cash Flow from sales:売却からの税引後キャッシュフロー)
計算式:ATCFs=BTCFs-譲渡所得税
課税所得に対する税金を支払った後に残るキャッシュフローです。このとき、譲渡所得税は
・譲渡所得=物件売却価格-(取得費+譲渡費用)
(このときの取得費は、購入時の取得費から、減価償却費の累計を引いたものです。)
・譲渡所得税=譲渡所得×譲渡所得税率
で算出されます。
LTV (Loan To Value:借入金割合)
計算式:LTV=借入額/物件価格
借入金額の物件価格に対する割合です。融資掛け目という言い方もあります。
一般的に物件購入時のLTVは、60~80%を目安と考えます。
FCR (Free and Clear Return:総収益率)
計算式:FCR=NOI/総投資額
NOI(純営業収益)の総投資額(購入諸経費を含む)に対する割合です。物件の投資効率を表しているといえる指標です。
K% (Loan Constant:ローン定数)
計算式:K%=ADS/現在のローン残高
ADS(年間返済総額)のローン残高に対する割合です。借入金額に関係なく、金利と期間のみによって決まってくる指標です。融資金の調達コスト(=貸手側から見る利回り)と言える指標で、K%とFCRを比較をすることによって、レバレッジ効果が働いているかどうかの判断ができます。
CCR (Cash on Cash Return:自己資本配当率)
計算式:CCR=キャッシュフロー/自己資金
自己資金総額に対するキャッシュフローの割合です。この数字が高いほど投資効率が高いと言えます。
一般的には、購入後1年の税引前キャッシュフローで計算することが多いようです。ConC%、EDR、ROE、ROIと言うこともあります。
Leverage Position (レバレッジ・ポジション、レバレッジ分析)
レバレッジ分析では、借入金によるレバレッジ効果を判定するために、FCR(実質利回り)とK%(ローン定数)の大小を比較します。FCRがK%を上回っていれば、借入金によるレバレッジ効果が働いて投資効率が上がっていると判断できます。その逆であれば、借入金の投入がむじろ投資効率の悪化を招いているということを意味します。
レバレッジ効果が働いている場合をPositive(+)、そうでない場合をNegative(-)と表現します。
DCR (Debt Coverage Ratio:借入償還余裕率)
計算式:DCR=NOI/ADS
ADS(年間元利返済額)に対するNOI(純営業収益)の比率です。DCRが大きいほど借入返済の確実性を増し、デフォルトが起きる可能性が低くなります。DSCR(Debt Service Coverage Ratio)と表現することもあります。
一般的には1.3以上を目安と考えます。
BER (Break Even Rate:損益分岐入居率)
計算式:BER=(OPEx+ADS)/GPI
OPEx(運営費)とADS(年間元利返済額)の合計額のGPI(総潜在収入)に対する比率で、各年度のOPExとADSの合計をカバーするためには空室率をいくらまで許容できるかなどを判断するための指標です。BE%と表現することもあります。日本語で収益分岐率と訳されることもあります。
一般的には70%以下を目安と考えます。
期待収益率(割引率) (Discount Rate)
期待収益率(割引率)は、投資家がこの不動産投資案件に期待する投資利回りのことです。
期待収益率に絶対的な基準はありませんが、リスクとの関連から、「期待収益率=リスクフリーレート+リスクプレミアム」という式で表されます。
リスクフリーレートとは、国債に代表される確定利付債券のように危険が無い資産の収益率のことです。現在の金融情勢からは、概ね2%程度と考えられています。
リスクプレミアムは、不動産投資市場に潜在する不確実性のことです。現在の市況では、リスクプレミアムは3%程度とするのが一般的のようです。
従って、現在の不動産投資における割引率は、5~6%とすることが多いようです。
NPV (Net Present Value:正味現在価値)
将来期待される全ての金銭的収益を、投資家の期待収益率(割引率)を用いて現在価値に割引いた価値と、初期投資額との差です。
NPV>0であれば、その投資が投資家の期待を上回ることになり、投資価値があると判断できます。
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IRR (Internal Rate of Return:内部収益率)
投資案件の利回りを示す重要な指標です。不動産投資においては、IRRは、不動産の運営や売却によって将来生み出されると期待されるキャッシュフローの現在価値が、初期投資額と同じになる(すなわちNPV=0となる)複利の利回りを求めることで計算されます。
投資家の期待収益率よりもIRRが上回る投資案件には、投資価値があると判断できます。
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PB (Pay Back Period:資金回収期間)
投資に要した自己資金が何年で回収できるかという数字です。
PB=自己資金/年間のキャッシュフローという式で簡易に計算できますが、より正確な値を求めるためには、各年度のキャッシュフローの累計が、いつ自己資金を上回るかを計算する必要があります。